2021年4月、マンガアイランドの管理運営業務を落札し、再び田代島に関わることになりました。「今年もよろしくお願いします!」とあいさつをしたとき、「島のえきもやらない?」と言われたのを覚えています。その時は完全に冗談だと思っていましたが、秋ごろになって、「今年度いっぱいで一般社団法人田代島にゃんこ共和国は解散し、島のえきは閉じることになった」と伺いました。
島のえきは、にゃんこ・ザ・プロジェクトの一環として2016年にはじまったと聞いています。にゃんこ・ザ・プロジェクトは、東日本大震災からの復興のために、猫の力を借りて田代島ファンから寄付を募り、流失した養殖業の資材などを購入して、独自に復興を目指した取り組みです。1口1万5千円で1万口、集められた合計1.5億円の寄付に、復興を支えていただきました。おかげさまで田代島は復興への道を歩み、観光客の足も少しずつ戻ってきました。復興に力を貸してくださった方々が島を訪れた際、休憩する場所もないのでは……という思いから、取り壊し予定だった田代島小中学校の施設の一部を活用し、「島のえき」が誕生したのです。
もともとは“恩返し”の場でした。採算性を追求するビジネスというより、船賃を払ってわざわざ訪れてくださる方々のために、安価に食事を提供したり、猫のお世話をしたりして続けられてきました。震災から10年が経ち、寄付を原資とした基金もおおむね使い切り、「震災の際にいただいた恩は返せたのではないか」と感じられる時期となっていました。そんな中でコロナ禍が重なり、さらに島の方々も年を重ねていくなか、にゃんこ・ザ・プロジェクトは一つの区切りを迎えることになりました。
とはいえ、「島のえき」はなくてはならない存在です。島民はおよそ40人、高齢化も進む中で、「島のえき」がなければ猫を目当てに訪れる観光客も困りますし、猫のお世話をしている島民の方々にとっても大きな負担になります。猫はご飯をくれる人の周囲にコミュニティを築くため、島の人口が減るほど、猫のお世話を担う人の負担が増えていくのです。特に、現役の働き手でなければなおさらです。また、離島航路の運営にも、観光客の存在は欠かせません。
そんな背景から、市とにゃんこ共和国の双方で、島のえきの運営を引き継げる人がいないかと探していた中で、結果的にその役割を担うことになったのが、たまたまその場にいた働き犬のわたし(犬塚)だったわけです。
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